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随時所感

2019.08.14

あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」について

私は、今回あいちトリエンナーレ2019で展示中止となった「表現の不自由展・その後」の展示物について、一部、政治的に偏ったヘイト展示であり、あのような企画展がなされたことについて極めて残念に思っている。

あれらの展示物について、民間団体が自己の管理スペースにどのような立場から、どのように表現しようが、まさにそれは日本国憲法で保障された表現の自由である。

ただし、公金を使って開催する展覧会にそれらを展示するか否かは公金を執行する主催者の自由裁量であると考える。

公権力が介入する表現の自由への侵害=違憲状態とは、展示物そのもがこの世に存在することを排除するため、公権力がその展示物及び表現者に強制力を用いた場合に限るものと考える。

愛知県の自民党は本件についてどのように考えるのか?とのご意見を私のもとにも多くいただいているので、以下、これまでの自民党愛知県議員団の動きをまとめさせていただいた。

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あいちトリエンナーレ、表現の不自由展に関する一連の動き

 

8月7日自民党県議団総会での県当局の説明

 

  • 展示の趣旨

〇津田監督は「過去に何らかの理由で展示不可となった作品を集め、表現の自由に関する問題提起をし、皆さんに議論していただくことが目的であって、個々の作品の主張や意見を肯定・否定するのでなく、政治的主張をする企画ではない。」と述べている。

〇あいちトリエンナーレは、これまで選任された芸術監督の総指揮の下で展示作品を始めとする芸術祭の中身を決定してきた。

〇今回も個々の展示作品の選定は、監督である津田氏と学芸員チームとの議論を経て、最終的には最高責任者である津田監督が決定している

〇今年1月の学芸員ミーティングで「表現の不自由展・その後」が芸文センターで実施されることが決定。

〇3月下旬の参加アーティスト記者発表の際に展示内容未定の状態で「表現の不自由展・その後」を発表。

〇県の事務局が「少女像」を含む展示内容を知ったのは4月下旬。

〇6月中旬には知事にも展示内容及び展示方法について事務局から報告。

〇事務局として円滑な運営に向け次の措置を実施。

・展示の趣旨及びSNS投稿禁止の掲示。

・展示室に防犯カメラの設置

・警備員を2人増員

・東警察署に協力要請

  • 津田監督選任の経緯

〇トリエンナーレの監督選任は従来から7名の学術経験者による「芸術監督選考委員会」により選考している。

・委員長:建畠晢(多摩美術大学学長)2010監督

・委員:五十嵐太郎(東北大学大学院教授)2013監督

・委員:加須屋明子(京都市立芸術大学教授)

・委員:中井康之(国立国際美術館学芸課長)

・委員:藤川哲(山口大学教授)

・委員:水野みか(名古屋市立大学教授)

・委員:港千尋(多摩美術大学教授)2016監督

〇2017年6月4日の選考委員会において次の3つの理由により津田氏が芸術監督に推薦された。

1)ジャーナリストである津田氏は社会情勢を踏まえた明確なコンセプトを打ち出すことができる。

2)津田氏はITにも造詣が深く様々な情報を発信することで国内外に強くアピールできる。

3)津田氏はバランス感覚に優れ、いろいろなアイデアや意見を取り込んでトリエンナーレを作り上げることができる。

〇選考委員会の推薦を受けて2017年7月18日に開催した「あいちトリエンナーレ実行委員会運営会議」において正式に津田氏を監督に決定。

 

以下、自民党県議団所属議員による質疑応答<抜粋>

 

A議員:6月に知事に報告とのことだが、知事はこの展示内容を全部知っていたのか?

当局:その時点で事務局が把握していた展示作品の中身について説明をし、平和の少女像についてはその中に入っておりました。

A議員:では大村知事はこれを許したということですか?

当局:これまでのトリエンナーレもそうでしたが、知事として企画内容に良し悪しの口を出す立場にないという認識でありまして、ただ、この少女像の実物展示の影響の大きさには懸念をされていて監督を通じて展示方法の調整はできないかなどのお話は知事からいただきました。

A議員:知事も懸念を示していたのになぜ止められなかったのか疑問だが、これに関連して県内各市町村の学校・保育園などの施設に8月8日に襲撃する旨の脅迫文がばらまかれている。どうするのか?

当局:脅迫メールは承知しているが、トリエンナーレとの関連性は私どもからは何とも申し上げられません。ただ、今起こっている問題には早急に対処し鎮静化を図ってまいりたい。

B議員:当局の説明を聞いていると津田氏に丸投げで県に責任はないと聞こえるが、県に責任はないのか?

当局:我々としては展示の影響の懸念については監督に伝えました。それでも実物展示(少女像)をやるという答えだものですから、警備員の増員だとか東警察署に協力依頼をするなどの対応を取りました。

B議員:これはヘイトと思うが、芸術だというなら、なぜ片一方の思想ばかりを展示し、反対側の思想の展示をするなどバランスを取らないのか疑問。津田氏を今後も続けさせるのか?

当局:トリエンナーレはまだ始まったばかりなので、安全安心に配慮しながら全うしてまいりたい。

B議員:確認ですが、監督にすでに任せてしまったから県としては、どうなっても従うしかないという認識だということですか?

当局:トリエンナーレはこれまでも作品・作家の選定等を監督にお任せしておりまして、それを我々事務局がサポートしていくというやり方は変わりません。

中村:少女像ばかり取り上げられて違和感を覚えます。島田・大浦・中垣の作品はヘイトだと思います。昭和天皇の顔がくりぬかれてバッテンをつけられたり、陛下の写真を燃やす映像、先程のやりとりで展示内容を当局も知事も知っててやられているということにびっくりしていますが、説明にあった4月中旬に当局が知って、どのような意見を申し上げて、どのような調整をしたのか伺います。

当局:先ほども申し上げたが、知事に説明した時にはその時点で判明している展示物のみであり、ですから、大浦氏の作品はその時点で事務局も把握していないので知事にも説明しておりません。

中村:4月8日にニコ生放送で行われた津田氏と東氏との対談で天皇展示について言及しています。東氏の「やっぱり天皇が燃やされたりするんですか?」の問いに津田氏はその可能性がある旨、答えます。さらに東氏が「令和改元のめでたいときにそんなことするんですか?」と聞くと、「でも2代前だからいいじゃん」と津田氏は答えています。当局としてこれ、把握していましたか?

当局:わたくしどもといたしましては、昨日、確認したところでして、その時点では把握してございませんでした。

中村:この企画は政治的主張をするものではないとのことですが、一方で天皇を展示している作品の解説文の中には「昭和天皇と推定できる彼は戦犯追及の声もあったが結局は逃れた」と書いてあるわけで、政治的主張はしないと言いながらこの解説文は極めて政治的だと思うわけですが当局としてどうお考えですか?

当局:こちらの展示作品の解説についてはこちらで内容は把握させていただいておりますが、これについては特に政治的主張ではないという理解でおります。

中村:大浦氏の作品について。作品の解説書の中に「本作品は富山県立近代美術館主催『86富山の美術』で展示され、展覧会終了後、県議会で『不快』などと批判され、地元新聞も『天皇ちゃかし、不快』などと報道し、非公開となる」とあります。富山県議会で「不快だ」と言われて非公開になったものをあいちトリエンナーレに持ってきて当局は愛知県議会は不快だと思わないという判断で行ったんですか?

当局:個々の作品の中身については我々としてコメントできる立場にありませんで、企画全体が表現の不自由を問うものだということで理解しておりました。

中村:資料にあります津田氏が選考委員会で選ばれた理由の3点目に「津田氏はバランス感覚に優れ…」とありますが、この期に及んでも彼はバランス感覚に優れているとお考えですか?

当局:私どもはバランス感覚に優れていると思っております。

以上。

 

8月9日、自民党県議団総会で団として知事への申し入れを行うことを決定。

 

8月13日、自民党県議団長名で以下の通り申し入れを行った旨、団所属議員に通知。

 

令和元年8月13日

愛知県知事大村秀章殿

自由民主党愛知県議員団団長杉浦孝成

あいちトリエンナーレ2019について(申し入れ)

今月から開催されている「あいちトリエンナーレ2019」については、『表現の不自由展・その後』をめぐり、大きな問題となっている。

我が党県議団では、現地調査や説明聴取などを踏まえて議論を重ね、意見集約を進めてきたが、芸術監督の資質、展示作品の政治性など、厳しい意見が寄せられた。

以下、その主たる項目を示すが、関係者におかれては、安全安心の確保はもちろんであるが、文化芸術の発展、その日常生活への浸透を通じて、地域の魅力を向上するという、開催目的に立ち返って、これまでの催事運営が適切であるかどうか、十分に検証し、必要な対応を図られることを強く要望する。

 

1、県民の安全確保と十分な説明

トリエンナーレ開幕以降、会場や県庁への脅迫・テロ予告にとどまらず、県内の学校などにもガソリンをまく、とのメールが届き、不特定多数に危険が及ぶ事態となっている。犯罪には毅然として対応することは論をまたないが、こうした事態を招いたことは「想定外」では済まされない。

また、今回の騒動の原因となった企画展に対して、不快感を示す声が多く寄せられているのも事実である。

県民の安全確保、事態の早期収束に全力を挙げるとともに、県民に対して今回の騒動に至った経緯をしっかり説明する必要がある。

2、津田芸術監督の選任について

監督の推薦理由の1つとして「バランス感覚に優れている」との説明があるが、いわゆる「慰安婦像」や、昭和天皇の御真影を焼いたような作品など、ヘイト(憎悪)を増幅するような企画を進め、数千件の抗議電話・メールや脅迫・テロ予告を引き起こしたことを考えると、その推薦理由は説得力に欠け、監督の選任プロセスに問題があったと言わざるを得ず、詳細な検証が必要である。

3、美術館ギャラリーの使用許可について

当催事は、美術館が定める利用者の手引き2(1)イに掲げる「国際的又は国内的に定評のある美術作品の展覧会」に該当するとの説明があったが、今回問題となっている展示は「定評ある美術作品」とは言い難い。

また、手引き2(5)コに定める「鑑賞者に著しく不快感を与える」作品でもあり、本来は展示制限を課すべきものではないのか。

さらに、手引き3(3)エでは、「特定の個人や集団に対する不当な差別的言動が行われる恐れがあるもの」については、利用許可しないこととされているが、今回の企画はまさしく、この条項に抵触するものではないのか。

4、公費支出のあり方について

3日目で中止となった今回の企画展に要した費用について、公費(税金)ではなく、寄付金を充当すると芸術監督が表明したようだが、これは、本企画展が不適切な内容であったことを事実上認めているものと思われる。

なお、経費については芸術監督の権限ではなく、実行委員会において精査の上、説明がなされるべきである。

また、今回の企画展(及びその中止)は、憲法に定める「表現の自由」の問題として取り上げられているが、ヘイト(憎悪)表現を含む政治的プロパガンダに過ぎないとの主張もある。

加えて、本企画展については、その企画、準備段階からの一連の経過を整理し、議会をはじめ県民に対して広く情報公開を行うべきである。

税金の使い道を監視する議会としては、4回目を迎えるトリエンナーレが、県が行う文化芸術振興施策への信頼を疑われるような事態を招いたことを深刻に受け止め、実行委員会と芸術監督の本来あるべき関係や、芸術監督の権限のあり方等についても十分な検証を行うとともに、公金を使った芸術作品の展示のあり方、芸術活動への公金を使った支援のあり方等について、幅広く検証を行い、その方向性を示す必要がある。

以上。

 

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